ある日、ネットで目に留まったルポライターの記事に引き込ま
れました。
「こんな光景をご存じないだろうか。薄暗い土蔵のような古い
建物の天井から、無数の鮭が頭を下にして吊るされている──」
それは、新潟県村上市の名産「塩引鮭」。
食通には知られた存在ですが、実際にその光景を見た人は
少ないかもしれません。
町屋通りにある「千年鮭きっかわ 本店」では、店の奥に進むと、
天井から吊るされた鮭たちが圧巻の姿を見せてくれます。
生命の気配、そして塩の匂い。かつてCMで吉永小百合さんが
歩いた、あの町並みがよみがえります。
村上の塩引鮭には、独自の作法があるのだそうです。
腹部をすべて割かず、首を吊らないよう下向きに干す——。
それは鮭に敬意を払い、命をいただくという精神から来ている
とのこと。城下町らしい、深い文化の香りがします。
記事の筆者は、そんな鮭を一尾まるごと使った料理に舌鼓を
打ったそうです。感想は「別途報告」とのことでしたが、
きっと忘れられない味だったのでしょう。
チチも東北で育ち、中学までの朝食にはよく塩引鮭が並んで
いました。ここ九州・別府ではなかなかお目にかかれないので、
特に「激辛の塩引鮭の酒粕煮」が恋しくなるようです。